先月、スクール生にむけてトッキーとDKの講習会がありました。
子供達にむけて何事も全力で取り組むということで、
「死ぬ気でやろう!」とのメッセージがありました。
講習内では、
子供達は自分達の限界を超えてしぼりだすということで、
いつもの数倍頑張って登っていました。
子供達も、やればけっこう頑張れんるだ!という達成感があったようです。
「死ぬ気でやる」
と言うのは簡単ですが、
実際に行動できるかと言うと、
「楽」なのが大好きな私にとっては耳の痛い話です。
そんな自分ですが、
「あなたは死ぬ気で何かやったことがありますか?」と聞かれたら、
答えは「はい」です。
正確に言うと「死ぬ気」ではなく、
全力で自分のもっているものをすべて出し切らないと命が消えるという感じです。
それは、自分の人生の中で様々な事を教えてくれたアルパインクライミングです。
山の中では「諦めたらおしまい」という状況は何度もありました。
厳冬期のアルパインクライミング中、10時間以上も行動していて、
もう動きたくないよーと気持ちの限界、体はヘロヘロだけど、
どこかレストできる場所まで移動しなければ、
悪天候にかわっていく空模様につかまって最悪な状況になるとか、
高所での70~80℃近い氷壁をトラバース(通常、悪い所はロープで確保して進む)するのに、
ロープをつけずに移動するほうが時間短縮になるので、トラバースを決行。
ちょっと気をぬけば確実に1000メートル以上の墜落は免れないけれど、
凍傷になりかけの動かない指でアックス(氷に突き刺すピッケル)を握り、
全集中で一歩一歩進んでいく時とか、
自分では信じられないパワーがでてくることがあります。
しかし、日常生活で「死ぬ気で行動できますか?」と聞かれたら、
答えは「いいえ・・・」です。
例えば、すごく高いボルダー課題で、
この一手を登り切らなければ完登できないけど滑りそうで怖いという時、
間違いなく登りきる勇気はありません。(自信満々・・・)
だって、完登しなくても「死なない」からです。
よくアスリートなどがすごく努力して
「死ぬ気で練習してこの日をむかえました。」みたいな話があると、
純粋にすごいな・・・と思います。
やらなくても死なないのに、
死ぬ気でできるって、すごく思い入れがあるんだなと思います。
私はアルパインクライミングで山に入るまで、
死ぬ気で頑張ったことなんて一度もありませんでした。
だけど、「ここを越えないと死ぬな」と思ってやってみたら、
意外にパワーが湧き出ててくる体験をしました。
子供達に頑張れ!という時、
そんなにできないよねと心の中で思うこともあります。
半面、
何にも頑張れなかったこんな自分でも
どうしても越えなければいけないと思うと死ぬ気で行動できたのです。
だから、誰でも死ぬ気で行動できるパワーがあることを私は知っています。
あとは、やるかやらないかだけ。
そうゆう場面に出会えるのは、
自分が本気で乗り越えたいと本人が思ったことなんだなと思います。
子供達がいつか、
クライミングでも、他のことでもいいけど、
本気でチャレンジすることに出会えるといいなと思いました。
子供達のパワーを見ながら
自分の人生後半戦、
たまには、死ぬ気で何かやってみようかなと思う今日この頃です。
Written By 吉谷 加奈子